2008年05月25日

天然シトリンの落とし穴

■出品するシトリンについて

シトリン.jpg

今回お譲りするシトリンは晶洞(がま)から切り取られた原石となります。アメシストやシトリンは結晶の先端部にだけ色がつき、残りの部分は徐々にミルキークォーツや水晶に変わっている状態で産出します。アメジストに比べシトリンが希少である理由は、がまの産出が少ないことに加え、シトリンが結晶の先端のわずかな部分にしか生じないからなのですが、今回お譲りするシトリンは、そのことがよくわかって頂ける対象でもあると思います。カットされた天然色のシトリンが天然石市場に流通しない理由も、この点にあるのです。

そもそも水晶は、晶洞(がま)と呼ばれる岩石や鉱脈に生じた空洞部の、養分が含まれた母液の中で成長します。がまの中で成長した水晶中に存在する微量の鉄分が、周囲の岩石からのラジウム放射を長期間に渡って受けた結果、シトリンが生じるとされています。




■天然シトリンの落とし穴

シトリンに関して私は「購入する人間が考える天然」と「売り手が提示している天然」の間に大きな開きがあることを頭において購入判断をされることをお勧めします。下記にその理由を記載しましたので、興味がある方はご一読ください。


○天然シトリンのほとんどは処理石

現在天然シトリンと銘打って販売されているシトリンのほとんどは、加熱処理品かもしくは放射線照射品です。天然色とわざわざ明記されているシトリンでもまったく安心はできません。見るからに危ない商品が「天然色のシトリン」として堂々と販売されているのをよく見かけます。中でもレモンイエローにうっすらと緑がかった色は本来のシトリンにはない色ですので、照射処理品である可能性がかなり高くなります。

放射線照射された「自称天然色シトリン」は、ビーズよりも原石の商品に多くみられます。これは不純物が多い原石のまま加熱すると割れや破裂の危険性があるためです。傷や不純物を取り除いたあと加熱をすれば割れや破裂の危険性は少なくなりますので、天然石ビーズとして販売されているシトリンには、照射処理品よりも加熱処理品が多いのです。

ちなみに照射処理品は鑑別機関で識別することができますし、加熱処理品にもそれを見分けるための手がかりがちゃんと存在しています。



○なぜ処理石が天然なのか

シトリンの処理品を天然シトリンと銘打っている理由として「アメジストを加熱処理したシトリンは天然シトリンとして鑑別書が出る」と説明されている業者さまを見かけるのですが、これは間違いです。通常、加熱処理されたシトリンは鑑別書に、鉱物名天然クォーツ、宝石名シトリンとして記載されます。また、照射処理品にも同じ記載がされます。あくまでも天然クォーツであって天然シトリンとは記載されません。

ところが、天然色のシトリンの流通があまりにも少ないために、処理されたシトリンを天然シトリンと銘打つことが「事実上容認されている」という、消費者にとってはありがたくない現実があります。もちろん「加熱処理品や照射処理品でも天然と認める」という暗黙のルールは、消費者の為のものではありません。売り手を有利にする為のルールです。

それなのに、処理されたシトリンを天然シトリンと表記しても良いという売り手のためのなし崩し的なルールを、まるで鑑別機関のお墨付きであるかのように説明する業者さまが存在するため、消費者はよりいっそうの混乱を強いられることになります。


ここで一般の消費者にとって重要なのは、加熱処理されたシトリンを天然シトリンと呼んでいいとするならば、放射線照射されたシトリンもまた天然シトリンで通ってしまうということです。実際にそれで通している業者さまも少なくありません。

人が手を加えていない天然色のシトリンはとても希少な天然石ですから、どうにかして販売する商品に天然シトリンと記載したい気持ちもわからなくはないですが、やはりそこには売る人間のための誤魔化しが入っていると言えるのではないでしょうか。



○購入する側が考える天然と売り手が提示している天然は違う

考えてもみてください。あえて天然色にこだわって天然石を選ぶ購入者の多くは、その天然石に人の手が加えられているかいないかを重視するのであって、人がどのような方法で手を加えたかを重視しているのではありません。

ですから「天然と同じ処理をしているからこれは天然シトリンです」と言われても、どうにもしっくりこないのです。ましてや「天然色のシトリン」と銘打って処理されたシトリンを販売されてしまっては、もうお手上げです。事前に問合せをしたところで、正しい購入判断などできようはずもなく、結果的に求めているものとは違う天然石を手することになってしまいます。

私が処理についてリサーチするきっかけとなった天然石が、まさしくこの処理シトリンだったのですが、天然だと明記され説明されていたからこそ購入したにも関わらず「石は天然です。でも色はつけてます」と言われた時のショックは非常に大きいものでした。他にも処理シトリンを天然シトリンとして販売することは間違いとは言えない、と説明された時に感じた、あの消化不良のようなモヤモヤとした気分。

いくら業界内で認められている表記であっても、消費者にとって何の利益ももたらさないどころか不利益ですらあるルールには、やはり理不尽さを感じずにはいられません。

天然色でないものは天然色でないと理解した上で購入したい。そのくらいの自由は消費者に与えられるべきだ、と私は考えています。



○余談

余談ですが、シトリンに関連した売るための誤魔化しといえば、シトリントパーズもそのひとつです。

30年ほど前の日本では、加熱シトリンの多くがトパーズとして売られていました。トパーズとして販売した方がよく売れたからなのですが、もちろんこれは間違いです。そしてこの間違いを修正する過程でトパーズとして販売されていたシトリンに、シトリントパーズという名称がつけられました。要するにシトリントパーズは間違いの帳尻合わせの結果生まれた名称なのです。

現在はシトリンをシトリントパーズと表記して販売する業者さまはほとんどありませんが、30年ほど前にトパーズとして購入した商品には、加熱シトリンの可能性があるわけです。


posted by isinohanasi at 13:02 | 業者と消費者の間にある認識の壁
一番上へ戻る
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。